『オープンダイアローグとは何か』の著者である斎藤環さんと、認知症や精神疾患の方へのケアをめぐる現状を起点として、それぞれが専門とするふたつの方法論が重なり合い、「ことばによる対話の可能性」が共鳴する対談でした。

斎藤環さん(左)と井庭崇(右)

斎藤環さん(左)と井庭崇(右)

 冒頭は、二人の著書の内容についてそれぞれ紹介。井庭は、パターン・ランゲージとは何か、現時点での世の中の広がり、そして認知症とともによりよく生きるためのパターン・ランゲージ『旅のことば』について語りました。斎藤さんからは、オープンダイアローグの運用と効果について解説されました。オープンダイアローグは、「開かれた対話」と訳され、もともとはフィンランド発の精神療法です。薬などを用いずに対話だけで治療するのが大きな特徴で、患者と主治医だけでなく、家族や友人・知人、看護師らを交えてミーティングを開き、対等に意見を述べ合うことで、治療をしていく手法です。

今回の対談で紹介された書籍

今回の対談で紹介された書籍

 「ことばによる対話の可能性」という共通項でふたりの思想がつながり、対談は前半から盛り上がりました。『旅のことば』は、認知症だけでなく、子育てや家族間のコミュニケーションにも応用できるではないか、という新たな可能性や、またさらに、心の病を持っている方を治療するためのオープンダイアローグと、通常の状態からポジティブによりよくすることをデザインするパターン・ランゲージが、双方、「言葉」による「対話」を行う「場」を大切にしていることから、こういった手法は、それらの間も含め、今後様々な用途で活用できるのではないか、といった話に広がっていきました。

 後半の質疑応答では、パターン・ランゲージは、「認知症だけではなく、癌といった別の分野の治療への応用可能性を感じた」という医療従事者の方からの声や、「介護をする家族ってあまり支援されていないと十何年間ずっと思い続けていたなかで、家族支援の立場にも立っている本を見つけてありがたい思いになった」といった家族の介護をしている方からの声がありました。また、「オープンダイアローグ」か「パターン・ランゲージ」のどちらかをきっかけに対談に訪れていた来場者も、今回の対談でもう片方の手法にも興味を持って頂けたようです。ふたつの手法が共鳴し合えば、よりことばによる対話を発展させることができるでしょう!

【関連イベントのご案内】
 『旅のことばカード』を使用したワークショップは、今後弊社オフィスにて定期的に開催していく予定です。自分の経験談を『旅のことば』に乗せて他の方にお話しできるとともに、同様に他の参加者の経験談を聞くことができます。認知症について話してみたい方、ご興味を持った方は、ぜひいらして下さいね。
 初の開催は2015年12月4日(金)19時~、2回目は2016年1月22日(金)19時~です!

【イベント詳細】
日時:2015年10月1日
場所:ゲンロンカフェ
井庭崇×斎藤環 認知症と新たなアプローチ パターン・ランゲージを応用する

【関連情報】
旅のことば 公式ページ
書籍『旅のことば 認知症とともによりよく生きるためのヒント』(Amazon)
カード「旅のことばカード(認知症とともによりよく生きるためのヒント・カード)」(Amazon)
書籍『オープンダイアローグとは何か』(Amazon)
ゲンロンカフェ togetter