お客様に対応するのではなく、おもてなしを創造する。

お客様に対応するのではなく、おもてなしを創造する。

  • お客さんは楽しそうにしているが、リピートしてもらえるかというとそうでもない。
  • 普通程度によいというサービスはできているが、賞賛されるようなレベルにいたらない。
  • 新しい地で店舗やホテルを開業したが、周囲にあまり歓迎されていない。

自分たちの価値を高めながら、お客様の心に残る経験をつくっていくための考え方を28個のことばでまとめました。

「おもてなし」というと、観光・サービス業や接客業の応対を思い浮かべがちですが、この「おもてなしデザイン・パターン」では、「おもてなし」をもう少し広義に捉えています。

「自分たちが提供するもの・ことだけでなく、属する地域・分野全体の価値を高めることも視野に入れながら、自ら考えて動き、チームや周囲の人たちと連携して心に残る経験をプロデュースする。」

単にその場で最適な良い対応をするというだけではなく、自らが能動的に動くことで、お客様の心に残る経験をつくりだすのが「おもてなし」。こう考えると、どのような仕事の方でも自分との関係があるとお思いになるのではないでしょうか。この「おもてなしデザイン・パターン」は、そのようにして自分たちの価値を高めながら、お客様の心に残る経験をつくり、満足していただくための考え方を28個のことばでまとめたものです。

具体的な表現の中には、旅行業やホテル業などを前提とした記述もありますが、おおむねどのような業種でもこのコツをヒントとして自分たちのサービスを見直していくことができます。必要に応じて言葉や文脈を自業種に置き換えながらお読みください。

仕事をするときのマインドセット、モチベーションアップに効果的です。

仕事をする際の心構えとして、定期的に眺めています。直接おもてなしをする仕事ではないですが、仕事をするときのマインドセット、モチベーションアップに効果的です。中空の言葉が、具体的な職種に限らない普遍的な内容のため、水平思考で「私の仕事の場合には…」と自分のこととしても考えることができ、腑に落ちるところです。人と関わりながら仕事をする人にお勧めです。

40代/女性/建築設計

一人ひとりを大切に思う、対話やチーム作り、街づくりに使えると思って活用している。

人と人との関係性をよくするための勉強会や考える会での問いかけとして使ってみている。一見、観光や宿泊、接客業向けという印象もあるが、内容を読み込むと一人ひとりを大切に思う、対話やチーム作り、街づくりに使えると思って活用している。日常の中でも、「周囲の方に対して」という状況を思い描き、カードを使って話し合ってみてもらったら、日常生活にもおもてなしの心が底に流れているということに気付くことができるところが良いと思う。マニュアルより上の意味を考え理解できるところが、パターン・ランゲージの良さだと思う。人と人が協力し合うチームを作る人たちにお勧めしたい。

50代/男性/社会インフラ・街づくり

  • サービスレベルを上げようと勉強しているが、なかなか実際に使える知識にならない。
  • この地域・分野ならではのサービスができているかというと、そうでもない気がする。
  • 新しいサービス価値をつくるということをきちんと考えてみたい。

おもてなしデザイン・パターン<カード>

「創造的おもてなし」の心得が28枚のカードになっています。カードであるため、一覧性があり、全貌を把握しながら焦点を定めた話をしたり、また多くの人数で一緒に対話することに向いています。

  • 自ら考えて動き、お客さんの心に残る体験をプロデュースする「創造的おもてなし」を考えるための28枚のカードセットです。
  • 書籍版「おもてなしデザイン・パターン」(翔泳社)で示されるコツ(パターン・ランゲージ部分)を抜粋したものです。複数人で「おもてなし」について考えていく用途に適しています。
  • カードはB7(91×128mm)でミーティングなどの場で使いやすい大きさになっています。コーティングがされており、繰り返しの使用が可能です。
  • ケース(9.7×13×1.6cm)の中には、説明書・28枚のカード、自己分析やチームでの振り返りをするための4枚のワークカードが入っています。

収録パターン

  • 【CORE】

    創造的おもてなし

  • 【お客様との心地よい関係性を築く】

    相手の気持ち / その人への興味 / 語りたくなる声かけ /
    フレンドリー&ポライト / キャラを立てる / フレッシュな心持ち /
    もてなされ研究 / もうひと手間 / チームごと

  • 【地域・分野の魅力を引き出す 】

    面で迎える / 好きから入る / 面白がり力 /
    裏側のストーリー / 自分なりのおすすめ / ローカルな楽しみ方 / 偶然を楽しむ余白 / 出会いのデザイン / ひとつながりの経験

  • 【地域・分野のこれからをともにつくる】

    想いの発信から / ご近所からの歓迎 / 多業種のつながり /
    雑談からの発想 / 外から見た良さ / 価値の増築 /
    魅力の持ち寄り / みんなでつくる / 世界へのアピール

語りたくなる声かけ

『おもてなしデザイン・パターン:インバウンド時代を生き抜くための「創造的おもてなし」の心得28』(井庭 崇, 中川 敬文著)

よくある質問

Q.旅行業のおもてなしが、他の仕事にも使えるイメージが持てません。

表面上の表現としてはホテルや観光に関する記述が出てきますが、本質は「お客様の満足をつくる」という、どの仕事においても大切な考え方に行きつきます。「パターン名」などをはじめとする、工夫を抽象化して本質だけを抜き出した言葉を見てみれば、どのような業種の方でもピンとくるものがあるのではないでしょうか。これは、本質を突きつめると、お客様の満足をつくるという観点ではどの業務においても共通するものがあるからではないかと思われます。

実際、「おもてなしデザイン・パターン」では、高い顧客満足を得ているホテルや飲食店のキーマンに「お客様にどのようなことをしているか」「どんな観点でサービスをつくっているのか」「そのために日ごろからどのようにしているか」などを伺って、制作しています。複数のインタビュイーに共通する要素を抽出したところ、その方々は、その場での最善の対応をしているのはもちろんのこと、それ以外にも、例えば日ごろから良いおもてなしができる自分でいるように《裏側のストーリー》を知ろうとしていたり《ローカルな楽しみ方》を自分で探していたりしていました。これは、扱う商品やサービスの成り立ちを学び、詳しい人たちだからこそ知っている楽しさをうまく解きほぐしてお客さんに伝えるということに読み替えることができます。

また《ご近所からの歓迎》が得られるように周囲や関連業種の他社との共存を設計したり、地元の人たちとの《雑談からの発想》をヒントにしながら、これまでの価値に、さらなる価値をつけたす《価値の増築》をしています。これは、同業者や関連する業界、同じ地域で仕事をしている人たちと協力しながら、その対話の中でヒントを見出し、これまでの価値を延伸させていくということといえます。

上記をまとめると、「創造的おもてなし」では、その地域の良さを知るために日々努力し、訪問者にその良さを存分に感じてもらえるように努めながらも、さらにその価値を高め、さらなる満足が生まれるようにしているといえますが、これは、どのような業界でも同じように考えてみることができることです。日々よいもの・ことをつくるだけではなく、自分たちの分野や業界が提供し得る価値がより高まるよう、周りと協力しながら分野・業界を見つめ、変え、発信していくという活動です。このように、少しでも共通するところがあれば、このカードをヒントに、ご自身の業務について対話をしていくことができるでしょう。

Q.インバウンド専用のものでしょうか?

いえ、観光業のもつ資源を最大限に活かしていくため、海外からの旅行客は当然視野に入っていますが、それに特化したものではありません。「おもてなしデザイン・パターン」でサービスを見直していくことは、地域の魅力を掘り出し、伝統に新しさを重ねて価値を進化させ、それを存分に味わっていただけるように提供する、ということを考えることにつながります。

日本人旅行客にとっても、その地域・サービスの魅力を再発見することができるようになり、国内旅行の価値を再発信することにもつながります。

Q.従業員のサービスレベルアップに使えますか?

はい。大切にしたい本質を共通認識として持ちながらも、ひとり一人が自分にできるおもてなしの仕方を考えていくことができるようになりますので、個人の努力や感性に任せたり、マニュアルで言動を管理するのではなく、自然で統一感のあるおもてなしができるようになると考えています。

「おもてなしデザイン・パターン・カード」の使い方には、「こうでなくてはいけない」というスタイルはありませんが、基本的には、カードを見ながら対話をしていくというものになります。

  • 責任者がみんなで考えて意見を出し合ってみたいカードを一枚選び、全員で話し合う
  • ひとり一人が気に入ったカードを選んで、普段自分がしていることを発表する
  • 従業員同士や、小さなチーム内でカードを使って自由に話し合う時間をつくってみる(いろいろな対話やカードの使い方が自発的に生み出されるはずです)
  • 1対1で話す際に、カードを間に置くことで、話の論点がおもてなしの本質からずれないようにする
などはいかがでしょうか。

また、イベント的に使うことも見られています。

  • みんなで取り組みたいカードを一枚決めて、1カ月そのカードを心がけながらそれぞれで日々を過ごすします。そして、その間にいただいたお客様からの評価をみんなにシェアする際には、「〇〇アワード」などという形で、その月の目標のカードの観点から良い事例を紹介ようにしてみます。例えば「《フレンドリー&ポライト》アワード」「《出会いのデザイン》アワード」など。このようにすると、担当部署が違っても、全員同じことを目標に行動し、様々な行動が生み出されていることを全社で感じ取ることができます。
  • また、1枚のカードをテーマとして、お客様向けに実施する企画案を募集することもお勧めです。例えば「《ローカルな楽しみ方》イベント案募集」「《キャラを立てる》月間のサービスとは?」など。企画案に「シバリ」のような遊びを取り入れることで発想が新しくなったり、観点を絞ってみんなで集中して掘り下げて考えることで、これまでよりも深い企画が生まれたりします。

他にもいろいろな使い方があると思いますので、ぜひ開発してみてください!(そして、新しい使い方を見つけたらぜひ教えてください!)

Q.全体の統一感と、各人の力を挙げることを両立するには?

まず、3~5人のグループをつくり、グループごとにカードをひと箱渡してください。部門はMIXしても、普段一緒にいる人たち同士で行っても、どちらでもOKです。28枚のカードについて1枚ずつみんなで話しながら、自分たちがそれを実践しているか、しているならば、どのようなケースがそれにあたるのかなどを話し合います。「実践レベルカード」(実践している(緑)・少ししている(水色)・していない(ピンク)の3枚)が入っていますので、話し合いが終わったものは、一番近いと思われる実践度のカードの近くに置いていきます。そして、全カードが終わるまでどんどん進めてください(長い時間がとりにくい場合は、お好きな枚数に減らしてください。大テーマごとに9枚のカードが入っている構造ですので、1回に9枚ずつにしても良いですね)。

分類が終わったら、その時点で「うちがしているおもてなし」がメンバー内で共通認識として言語化されている状態になっています。そこで、引き続き「取り入れたい」というカードを出してきて、今、実践が十分でないカードのうち、取り入れることでより良くなるものはどれかをみんなで話し合っていきます。「少ししている(水色)」「していない(ピンク)」の周りにあるカードを見ながら、やりたいものをすべて「取り入れたい(黄色)」の近くへ移した後、話しながら減らしていくと良いでしょう。

最終的に1枚か2枚に絞れたら、今度は一人ひとり、そのカードを自分の担当業務に引きつけ、「私はこうやって実践してみる」という案まで落とし込み、話します。グループ内で「いいね」「さらにこうしたら」「じゃぁ私はこう連携する」などと盛り上げていけると、新しいサービスをしていけることが、とても楽しみになってきます。

ワークの前半で、みなさんで「うちのサービスらしさ」を(なんとなくであっても)掴んでいますので、個人の個性に振り切れすぎることもなく、かといって画一的でもないオリジナルな実行案が生まれてくるはずです。他のメンバーも、それぞれが新しいサービスを頑張っていることを横目で見て、応援の気持ちを持ちながら、日々の業務にあたることができますので、チーム力も高まっていきます。

この使い方の特徴は、チームで共通の感覚を持ちながら、個々人の行動に落とし込めることですが、もっとも強いのは、現場から「次の目標」が挙がり実行されることです。グループがたくさんあれば、みんながそれぞれのチャレンジをしている状態になりますが、全体で前向きの力をもった雰囲気がつくられていきます。

これからの「おもてなし」を考えていきましょう。

おもてなしデザインパターンは、ふたつの大きな提案をしています。

まず、観光業において、日本各地域で培われてきた今までの伝統的な良さを踏まえつつ、それぞれがより魅力的に変わっていくためのヒントとしてです。本作は、従来の伝統的なおもてなしを活かしながら、海外からの旅客・インバウンドに対して日本の魅力を伝え、訪れてもらえるようにすることを重視しています。これは、日本の魅力をアップデートしてこれからの世界でも存在感をもっていくために、また日本国内でも、より国内旅行の魅力が溢れ、多くの方が各地の個性を楽しめるようになるためにも大変大切なことです。

もう1点は、日本が世界に誇る強みともいえる、観光・接客業のいわゆる「おもてなし力」の活用です。伝統的に培われてきたこの知見が、他の業種・業界にも取り入れられるように書かれているのです。日本のモノづくり・コトづくりは素晴らしいレベルにあり、それぞれの業界内に既存の強い力があるのは言うまでもありません。ですが旅行や接客業の力をさらに取り入れてみると、さらに変わることができるのではないでしょうか。より日本らしい細やかな気持ちがプラスされるのか、伝統を重んじながら変わっていく力が加わるのか、それはやってみないことには分かりません。ですが、新しい価値をつくるのが難しいと言われている昨今においては、他の業種・業界の方への「発見感」も、大変大きな価値があるのではないかと思います。

「点でもてなす時代は終わり、面で迎える力を高めなければ」と伝える本作を、ぜひ新たな「おもてなし=満足」をつくるためのヒントにしてみてください。

おもてなしデザイン・パターン<カード>

「創造的おもてなし」の心得が28枚のカードになっています。カードであるため、一覧性があり、全貌を把握しながら焦点を定めた話をしたり、また多くの人数で一緒に対話することに向いています。

  • 自ら考えて動き、お客さんの心に残る体験をプロデュースする「創造的おもてなし」を考えるための28枚のカードセットです。
  • 書籍版「おもてなしデザイン・パターン」(翔泳社)で示されるコツ(パターン・ランゲージ部分)を抜粋したものです。複数人で「おもてなし」について考えていく用途に適しています。
  • カードはB7(91×128mm)でミーティングなどの場で使いやすい大きさになっています。コーティングがされており、繰り返しの使用が可能です。
  • ケース(9.7×13×1.6cm)の中には、説明書・28枚のカード、自己分析やチームでの振り返りをするための4枚のワークカードが入っています。

『おもてなしデザイン・パターン:インバウンド時代を生き抜くための「創造的おもてなし」の心得28』(井庭 崇, 中川 敬文著)