パターン・ランゲージとは

パターン・ランゲージは、状況に応じた判断の成功の経験則を記述したもので、成功している事例の中で繰り返し見られる「パターン」が抽出され、抽象化を経て言語(ランゲージ)化されたものです。そういった成功の“秘訣“ともいうべきものは、「実践知」「暗黙知」「センス」「勘」「コツ」などといわれますが、なかなか他者には共有しにくいものです。パターン・ランゲージは、それを言葉として表現することによって、ノウハウを持つ個人がどのような視点で、どんなことを考えて、何をしているのかを、他の人と共有可能にします。

優れた点は?

個々人のなかにある経験則を言葉として形式化することによって、以下のようなよい点が生まれます。

1.「言葉」として対話の中で使うことで、「秘訣」を共有できます。

他人の成功体験を聞いても、その本質をつかむことは容易ではありません。それは、話す側も、自分の成功の本質を捉えて、それがスムーズに伝わるように話が構成するのが難しい、ということの裏返しでもあります。

ですが、パターン・ランゲージを介して対話をすることで、“今の対話で共有すべき成功の本質”を両者ともに理解しながら経験談を話し、聞くことができるようになります。個人の経験が成功の本質に沿った形で効果的に引き出され、他人に伝わるのです。聞いた人も、本質と、話者の状況ならではの具体エピソードを分けて聞くことができるため、本質を自分の状況に当てはめて、取り入れることができるようになります。

2.「言葉」がなければ見えない現象を、認識することができるようになります。

「机」という言葉がなければ、「机」について語り合うことはできません。どのようなものがよい机なのか、自分はどんな机がほしいのか…なども、他者と話し合うことはできません。このように、言葉がなければ、あるものを共通概念として認識することは難しいのです。

同様に、秘訣にも名前がなければ、その秘訣を認識し、他人に伝授したり、よりよくするために話し合うことができません。パターン・ランゲージは、秘訣に名前をつけることで、秘訣を人々が認識することをサポートします。

私たちは、パターン・ランゲージを「認識のメガネ」と呼んでいます。言葉があることで、上手な人がなぜ上手なのか、よいチームがなぜよいのかを理解することができます。これは、その秘訣について話し合い、他に広めていく土台となっています。

3.自分の経験をいかしつつ、他の経験を取り入れることで、その人らしさを肯定しながら成長することを促します。

成長するには、よいやり方を学んでいく必要がありますが、自分の状況や環境、個性などに合わせながら、他者の秘訣を取り入れていくのは、なかなか難しいことです。パターン・ランゲージは、よい活動の「よさ」を構成する要素を細かく小さくわけて、手軽に扱える大きさにすること、また、具体的にどう行動するかを自分に合わせて考える余地がある程度の抽象度で、秘訣を記述することで、個々人が過去の成功パターンが取り入れやすくなるようにつくられています。

自分のやり方を変え、人のやり方をまねするのではなく、自分の状況に合わせて秘訣を取り入れることで、自分のよさ、らしさを保ちながら、変化していくことができます。自分の過去の経験の上に、成功した他者のコツを乗せていくことで、「経験の連続性」をつくっていけるようにでつくられています。

どういった方法なの?

パターン・ランゲージは、もともと1970年代に建築家クリストファー・アレグザンダーが住民参加のまちづくりのために提唱した知識記述の方法です。アレグザンダーは、町や建物に繰り返し現れる関係性を「パターン」と呼び、それを「ランゲージ」(言語)として共有する方法を考案しました。彼が目指したのは、誰もがデザインのプロセスに参加できる方法でした。町や建物をつくるのは建築家ですが、実際に住み、アレンジしながら育てていくのは住民だからです。

「パターン」は、いわば文法のようなものをもっており、決まったルールで書かれます。どのパターンも、ある「状況」(Context)において生じる「問題」(Problem)と、その「解決」(Solution)の方法がセットになって記述され、それに「名前」(パターン名)がつけられる、という構造をもっています。このように一定の記述形式で秘訣を記することによって、パターン名(名前)に多くの意味が含まれ、それが共通で認識され、「言葉」として機能するようになっているのです。

建築分野で発展したパターン・ランゲージは、1990年代には、ソフトウェアの分野に取り入れられるようになり、大変多くのパターンが書かれるようになりました。その後、2000年に入り、人間の行為の秘訣を記述するために応用されるようになってきています。井庭研で制作しているパターン・ランゲージは、この第3世代にあたり、「パターン・ランゲージ3.0」と呼ばれています。

マニュアルとどう違うの?

現在、多くの領域では、理念(スローガン)とマニュアル(行動指示)の間をつなぐ言葉がありません。そのつながりは、その文化に長くいる者には見え、体現できるものの、経験の浅い人には大変難しく、理念に則った日々の行動を行うことはなかなかできません。

パターン・ランゲージは、理念とマニュアルの中空を結ぶ「言葉たち」です。理念に結びつきながら、行動は示しません。それにより、どのように行動することで、よい「質」を生み出していけるかを考えることができるようにつくられています。

パターン・ランゲージは、言葉では理解しにくいですが、使ってみればとてもわかりやすいものです。クリエティブシフトでは、パターン・ランゲージのセミナーを行っておりますので、お気軽にご連絡ください。